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親族間扶養公正証書


親族間扶養公正証書

親族間扶養公正証書とは、親族間の扶養義務に伴なって、将来、直系親族および兄弟姉妹間において生じる虞のある諸問題にについて、トラブル予防を目的として約束事を取りまとめた書面を公文書化したものです。


夫婦や親子、祖父・祖母、兄弟姉妹の間には、互いに扶養義務があります。
(民法第877条)

民法第877条(扶養義務者)

直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。

2 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。

3 前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。


1項に定められた直系血族と兄弟姉妹を「絶対的扶養義務者」、2項に定められた三親等内の親族を「相対的扶養義務者」といいます。
「相対的扶養義務者」は、家庭裁判所が「特別の事情」があると認めた例外的な場合だけ扶養義務を負うものとされ、判例上も「相当とされる程度の経済的対価を得ている場合」や「高度の道義的恩恵を得ている場合」「同居者である場合」等の場合に、限定的に義務を認めています。

なお、夫婦間及び親の未成熟の子に対しては、自分自身と同等の生活を保障する「生活保持義務」ですが、その他の親族間においての義務は、扶養義務者と同居の家族がその者の社会的地位にふさわしい生活を成り立たせた上でなお余裕があれば援助する「生活扶助義務」に留まります。

とはいっても、同居している親の介護を放棄して死なせたりしてしまえば、保護責任者遺棄致死罪として刑事処罰を受ける恐れもあります。

老親の介護をどうするか、あるいは、親族内に心身の障がいによって養育監護の必要な子がいる場合に、誰がどのような形で面倒を見たり、面倒見や経済的な支援をするのか、など、役割分担については、当事者間で取り決めを行うことが重要です。

もっとも、親族間の扶養に関する契約というものは、通常の取引における契約などとは違い、一定の基準を取り決めておいたとしても、未来永劫にわたって不変で強制するという性質のでは無く、扶養される方の需要や扶養する側の状況によって変更が出来るようにしておくことも重要です。

また、兄弟姉妹による両親の扶養についての定めを取り決める場合においては、扶養者間での負担割合や求償に関する定めをおくことも必要となります。

そのため、将来的な紛争予防のために、一定の取り決めをして書面化しておくことは、とても重要なことだと思います。
また、必要に応じて、将来の状況の変更についても、ある程度の目安や基準を定めておく、という意味で効果的に活用出来る場合もあります。


親族間で、居住用の不動産を無償で貸し渡して住まわせる場合、民法上、無償の建物貸借は「使用貸借契約」といって、書面で定めておかない限り、いつでも貸主の都合で契約を解除することは可能であるため、出来る限り、将来的なトラブル防止のため、必要な項目を書面に記載しておいた方が安全です。


親族間扶養公正証書に定める事項

  • 同居・扶養者の定め
  • 生活費の負担や分担に関する定め
  • 養育介護や医療に関する定め
  • 財産の管理・保存に関する定め
  • 扶養者間における負担割合や求償に関する定め

判断能力が充分であっても、身体が不自由になってしまうと、金融機関でのお金の引出しや必要費の支払いが出来なくなると、日常生活に支障をきたす可能性があります。

そのような場合に備え、特に、財産管理や医療関係の手続きを信頼できる第三者に任せることを目的として、財産管理契約公正証書として作成するケースも多くあります。

特に、老親に扶養に関して、将来の認知証や精神障害などで判断能力が不十分になった場合に備え、あらかじめ、特定の「任意後見人」を定め、財産の管理や医療サービス、施設への入所などの身の回りの手続きを代わりにやってもらうという、後見事務の内容を定める契約については、別途、「任意後見契約に関する法律」という法律による規定があり、別途、「任意後見契約」を公正証書として定め、登記をしなければなりません。
詳細については、任意後見契約公正証書のページをご覧になってみて下さい。